年収の高い業界は、国税庁の民間給与実態統計調査(2012年9月公表)によれば電気・ガス・熱供給・水道業の 713 万円だそうです。

ところで、転職で給与の高い会社に移りたい場合にどのような観点で会社を探していけばいいのでしょうか?

個々の会社について表面的な数字から高い安いと見ていくのも良いかもしれませんが、転職で失敗しないためには、それよりも原理原則から判断することをお勧めします。

原則論として、次のいずれかの企業は、そうでない企業比べ年収が高くなります。もちろん2つを満たしていれば一層、その傾向が強くなります。

  • 参入障壁の高い業界
  • ブランドを有する企業

先ず、参入障壁の高い業界ですが、参入障壁の高い業界は、競合がいないか、いても共存を前提にしているので、コストを基準に十分な利益を得られる売価設定ができます。もちろん、コストには従業員の給与も含まれます。

参入障壁の高い業界には、許認可の観点からと初期投資額の観点からの2種類あります(両方の場合もあります)。そのうち、許認可の観点から参入障壁の高い業界の特徴として、経営危機などの万一のときの国の保護・援助が挙げられます。

高めかつ安定を求めるなら許認可事業かつ初期投資額(設備投資だけでなく法律の求める最低資本も含む)の大きい業界です。許認可の取得難易度が高い業界ほど優位です。

国税庁の調査で上位にランクされた電気・ガス・熱供給・水道業と金融業はまさにこのような業界に当たります。

許認可といっても、現在の人材紹介業のように実質的には役所への報告に近い事業もあります。そのような業界は当然、参入障壁が低くなります。

もう一つ、年収が高く安定的な企業はブランドを有する企業です。

ブランドといっても、いわゆる高級ブランドバッグのようなものだけを指しているわけではありません。ブランドバッグのように一般消費者に知れわたっている必要はありません。正確に言うならば、同業や同商品のなかで、言い換えれば同一顧客群に対してブランドを有する企業と言えます。

ブランドを有する企業は、同業他社に比べ原価に多くの利益を上乗せして販売することができます。その分、人件費すなわち給与にまわせるキャッシュも同業他社よりも多く取ることができます。

それではブランドとは何でしょうか?

ブランドは、他社よりも優位な商品開発力、マーケティング力、サービス提供力から形成され、それを顧客が認識できたとき、顧客にとっての安心料として他社よりも売価を上げることができます。売価を他社と同じにした場合は販売数量を増やすことができます。

考えてみれば、3つの力は全て社員の能力によって醸成されたものなので、給与に帰ってくるというのは当然といえば当然かもしれません。

ちなみに顧客が認知・認識できなければ、どんなに素晴らしい商品やサービスを有していてもブランドになりません。

ブランドの観点から転職先を見るときに注意したい点は、ブランドは未来永劫続くものではないということです。

過去のブランド力で食べている企業もあります。そのような企業が今、ブランドを醸成する努力を怠っていれば近い将来、衰退していきます。

前出の許認可による参入障壁が高い業界も未来永劫続くものではありませんが、ブランドの方がシビアです。ブランドの有無を判断するのは市場であり、市場は動きが早いからです。より優位なブランド(商品開発力、マーケティング力、サービス提供力)を有する企業が現れれば、今までのブランド企業のブランドは瞬く間に消滅します。一方、許認可による参入障壁が高い業界は、官僚や政治家が要否を判断します。動きは市場に比べれば信じられないくらい遅いので、なかなか変わらないという意味では安心です。

ブランドの観点から転職先を検討する場合は、現在のブランドは過去に醸成されたものであるこを認識し、今、将来に向けたブランド醸成がなされているかとう点に注目しましょう。

突出したブランド力を有する企業や○○電力という企業でなければダメだということではありません。

実際の転職活動では、今の勤務先よりも安定的で給与の高い転職先を探すことが目的です。同業界でも今の勤務先よりも顧客に対してブランドを有している企業、その企業の方が原則論で言えば給与が高くなります。

しかし、あくまでも原則です。この原則から外れる場合もあるでしょう。その場合は、なぜ原則から外れて給与が高いのか若しくは低いのか。その差異を自分なりに分析、その理由に納得できたら入社しましょう。

冒頭の繰り返しになりますが、ブランド企業とはあなたが知っている企業ではありません。友人か知っているか、一般消費者が知っているかではありません。その商品や業界の顧客群がブランドとして認知しているかです。

転職先が、今の勤務先よりも少しでもブランド力を有しているか、少しでも参入障壁の高い業界かという観点で見れば、今回の転職活動では形式的な給与の多寡で見るよりも良い判断ができるはずです。

まとめ

今より給与の高い企業に転職したいなら、ビジネスの原則で考える。

利益率の高い企業

  • 参入障壁の高い業界
  • ブランドを有する企業

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