国税庁が6月9日、「移転価格ガイドブック ~自発的な税務コンプライアンスの維持・向上に向けて~」を公表しました。
国税庁では、BEPSプロジェクトの進展や、移転価格文書化制度の整備などの移転価格を取り巻く環境変化の下、移転価格税制に関する納税者の自発的な税務コンプライアンスを高めることを目指し、事務運営(取組方針、具体的な施策)を見直すとともに、納税者の予測可能性や行政の透明性を向上させるため、平成29(2017)年6月、「移転価格ガイドブック~自発的な税務コンプライアンスの維持・向上に向けて~」を公表しました。
(出所:移転価格ガイドブック~自発的な税務コンプライアンスの維持・向上に向けて~|報道発表資料(プレスリリース)目次|国税庁)
転職の応募先企業が海外に製造会社や販売会社等の海外拠点を有しているなら必ず目を通しておきましょう。
応募案件の職務内容に記述がなかったとしても、海外拠点を設営しはじめた企業や移転価格税制対策に何か手を付けなければと思い始めている企業は、面接中に何とはなしに移転価格のことを話題にすることがあります。その際に、全く話が噛み合わないのと移転価格税制の実務経験はなくとも概略を知っているのとでは印象が全く違います。もちろん、転職活動に関係なく経理職で食べていくつもりなら、現在の担当業務に直接関係がなくても移転価格税制の概略程度は頭に入れておくべきです。
概略を習得するだけならば、この国税庁の移転価格ガイドブックで充分です。移転価格税制とはから始まり事例、文書化の方法まで網羅されています。
国税庁は、このガイドブックの公表により、移転価格税制に関する納税者の予測可能性や行政の透明性を向上、移転価格税制に関する適正・公平な課税の実現を向上させるとしています。
すなわち現在では透明性が充分ではなく納税者の予見も難しいことがあるということになります。
国税局に調査される場合は、この宣言通りに移転価格税制の動向を意識した課税が行われそうですが、税務署に調査される企業の場合は本来は移転価格税制で議論すべきものが実質課税のような寄附金・交際費課税のような課税根拠が不明瞭で理不尽な更生に持っていかれることもあるかもしれません。中小企業だから関係ないと思っていると痛い目に会いかねません。移転価格税制の知識や経験がある税理士法人や税理士事務所は限られています。移転価格税制では頼りにならないかもしれません。普段から勉強しておきましょう。
移転価格税制にかぎらず税全般について納税者の予測可能性や行政の透明性、適正・公平な課税を実現してほしいものです。