時事ニュースから会計処理を考える
交換取引所が経営破綻するなど、昨今話題のビットコイン
今のところ、一般企業がビットコインを保有したり、ビットコインを用いて取引を行ったりすることはないとは思います。それでも、ビットコインのような自社では行わないような取引でも関心を持ち、どのように会計や税務処理するのかを考えたり同僚と議論するのは良いことです。会計上・税務上のあらゆる知識や経験を動員して洞察することになるので勉強になります。
仮に1ビットコイン=100円のレートで、1000ビットコインを10万円で購入したとしよう。その場合は、「借方/ビットコイン10万円」「貸方/現金10万円」と計上する。
その後、1ビットコイン=150円に値上がりしたところで現金に替えるとどうなるだろう。1000ビットコインを15万円に替えるので、「借方/現金15万円」「貸方/ビットコイン10万円、運用益5万円」と計上する処理が、現状では考えられる1つの案だ。
出所:PRESIDENT Online http://president.jp/articles/-/12633
ビットコインを販売目的として取得した場合には、ビットコインは貴金属のようなコモディティと同様の性質を有することから、企業会計原則と関係諸法令との調整に関する連続意見書四に従い、棚卸資産として取り扱うべきであろう。また、他の財との物々交換目的でビットコインを保有する場合にも、棚卸資産として取り扱うことが適当であると考えられる。ビットコインを取引の際の支払手段として使用した場合には、物々交換として会計処理するとともに、取引時のビットコインの市場価格とビットコインの簿価の差額を損益として認識すべきであろう。
出所:税大ジャーナル2014.4 ビットコインと税務 https://www.nta.go.jp/ntc/kenkyu/journal/saisin/260430_tsuchiya.pdf
このように専門家が見解を示していますが、そのような答えを見るまえに自分自身で考えてみましょう。
ちなみに、2014年3月7日の政府答弁書第二八号( http://goo.gl/oQke8X )では、仮想通貨「ビットコイン」について「通貨には該当しない」との見解を示しています。ビットコインを用いた取引に関しては、所得税や法人税、消費税の「課税の対象となる」と明記。ビットコインを明確に位置付ける法律はなく、その取引は銀行法の銀行業や金融商品取引法の有価証券の取引に該当しないとしています。
原理原則・仮説から答えを導く力をつける
時事ニュースをネタに会計処理や税務処理について考えるクセをつけておくと、自然と原理原則から仮説を立て、答えを導き出す力が身についていきます。このような力をつけると応用力や適切な判断力が身につきます。あなたが将来、CFOや管理本部長として活躍したいと考えているなら、適切な判断力が特に必要です。そのようなポジションでは、すべての事案について詳細に知ることはできないですし時間もありません。原理原則から物事を判断する力がとても大切になってくるのです。
20年位前に、ある日本の大手電機メーカーの駐在員が南米で誘拐されました。この事件は、会社が億単位の身代金を支払って社員を助けだしたとも言われてます。実際に身代金を払ったかどうかの真偽はわかりませんが、このとき、交際費?、寄付金?、使途不明金ではないのか、いや人道的かつ緊急的な処置として超法規的に損金算入できるのではないかと税務上の取り扱いについて同僚と議論をした、そのような記憶が私にもあります。
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