マスコミの記事に次のような記事がありました。

流出文書に東北電系など公益企業名も タックスヘイブン

税務的に疑わしいことをしているでしょう
という論調でこの記事は書かれています。経理職ならそのまま受け取るべきではないと思える位の周辺知識があった方が良いと思い簡単に記します。

タックスヘイブン対策税制は、日本の税制上タックスヘイブンとなる国に所在する子会社を日本の親会社の所得と合算して申告納税する日本の税制です。

正確にはPWC税理士法人のHPに解説がありましたので参照ください。http://www.pwc.com/jp/ja/tax-articles/tam-2011-12.jhtml

まっとうな企業であれば、タックスヘイブン国の子会社(ペーパーカンパニーであっても)については、この税制にしたがって日本で合算納税を行なっています。

それでは、なぜこのような国々に会社を設立するのか?
日本の税制上のタックスヘイブン税制は所得に関するものですが、ご存知の通り税金には所得に課税されるもの以外にもたくさんあります。所得税以外の税もタックスヘイブン国ではなかったりすることもあるわけです。例えば、役所に何かを申請したり証明書をもらったりするだけで、登録税や手数料という名の税金を取られますよね。日本のような、がんじがらめの許認可制度自体もあまりなかったりするわけです。許認可事項が少なければその分手間も減りますし、高額な申請料などもいりません。

ビジネスを遂行する上では、法人所得税以外の税や許認可もコストになります。

とりわけ、国際的なスキームを組む場合に外国企業からは、ときに根回しも必要な日本の許認可は嫌われることも珍しくありません。根回しもビジネス上はコストですし、リスクです。官公庁の一声で許認可がひっくり返ってしまうとすれば、それは大変なリスクです。

そのような背景から、法人所得のためではなく、その他コスト(複雑な法制度や許認可はコストになる)やビジネスリスクを避けるために利用しているのです。その国がたまたまタックスヘイブン国でもあると考えれば分かりやすいかもしれません。

もちろん、まっとうではない企業はタックスヘイブン国を利用して租税回避をしているかもしれません。しかし、それはバレるかバレないかの単純な脱税、マルサの女で見るような庭に札束を埋めるというようなものと同じレベルです。まっとうな企業は所得税回避のためにタックスヘイブン国を利用するようなことはしないでしょう。

経理職として、このような日常業務に関係のない取引でも関心を持って概要だけでも知っておくようにしましょう。

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