厚生生労働省が四半期ごとに行なっている労働経済動向調査によると、6期連続で正社員が不足の状況となっていることが分かった。それでは転職市場も好調なのでしょうか?

24年11月1日現在の正社員等労働者過不足判断D.I.をみると、調査産業計で14ポイントと6期連続して不足となった

( 出所:厚生労働省 労働経済動向調査 http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/43-1.html )

四半期ごとの調査なので、6期連続というと1年半。1年半前から企業では正社員がずっと不足していることになります。それほど不足しているのであれば、もっと求人が旺盛になり転職市場に活気があってもよさそうです。現在の転職市場は改善の状況にあるとは言え、とても活気に満ちているとまでは言えません。

正社員等労働者過不足判断とは

厚生生労働省の労働経済動向調査の調査をよく見てみると、不足しているから「採用を行なったか」とまでは聞いていません。調査票を見ると労働者の過不足を聞いているだけです。ですから、不足していると感じているかという気分を聞いているだけだったのです。

不景気時の社員不足感とは

好景気や景気浮揚時には、不足感=採用になりますが、現在のような不景気下においては、不足感だけでは募集に至りません。企業にとって人件費は最大のコスト要素です。しかも、正社員の場合、変動費ではなく固定費(時間外手当等の除く)です。業績向上が見込めなければ固定費を増やすことはできません。固定費ではなく変動費(今の人員で残業する)で頑張るということになります。社員の不足感があっても、採用は景気先行き感に影響されます。ニュースや特に転職サイトでは、社員不足感=良い話というニュアンスで伝えられることも多いですが、不景気下においては、とくに良い話ではありません。逆に転職市場の流動性が失えれていることの表れと言えるでしょう。

当面は転職市場の流動性悪化

内閣府は2012年12月7日、「景気動向指数は悪化を示している」と発表しました。基調判断を「悪化」としたのはリーマン・ショック後の2009年以来です。毎日jpによれば、内閣府は「景気後退の基調が定着している可能性が高い」としているとのことです。

当面は、厚生生労働省の労働経済動向調査による正社員不足が報道されても、それは採用が増えるという意味ではなく、更に転職市場の流動性が失われていると捉えましょう。

2012/12/13
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