東京商工リサーチによれば、2015年度(2015年4月‐2016年3月)に「不適切な会計・経理」を開示した上場企業は58社(58件)で、過去最多だそうです。

内訳に、「誤り」、「着服」、「業績や営業ノルマ達成を動機とする架空売上」、「循環取引」等が含まれていますが、経理の立場からすると先ず、不適切会計と言えるのは「誤り」だけではないのかと。「業績や営業ノルマ達成を動機とする架空売上」、「循環取引」が粉飾、「着服」は会計の問題ではなく単なる窃盗事件ではないでしょうか。

不適切会計の内訳にこれらが含まれていることに違和感を覚えます。不適切会計という言葉は、粉飾や窃盗事件と表現すると企業イメージに重大な打撃を与えることになるからと考えられた詭弁(キベン)でしょう。

同調査では、2015年度は前年度から倍増、しかもその約4分の1(構成比 24.1%)が2016年3月に集中した理由を金融庁が会計監査の信頼性確保を提言し指導した成果であると分析しています。

3月8日に金融庁が提言を公表
→監査法人がクライアントへ伝える
→クライアントが社内調査
→発表すべきものか企業内で検討
→社内申請
→社内(複数)決済
→発表原稿を起案する
→原稿の社内申請
→原稿の(複数)決済
→不適切会計を公表する

不適切会計が最も多かった市場は東証一部だそうです。東証一部上場企業が、現実的にこれだけの手続きを、僅か16営業日で成し遂げることができるのでしょうか。

はなはだ疑問です。

景気悪化に耐え切れず粉飾をする企業が増加、東芝事件のこともあり事前の社内調査により経営として事実を把握していたが発表に踏みきれずにいた。

どこか一社が先陣を切って不正を発表、それを見た他企業が発表するなら他社が発表した今しかない、今なら複数社のうちの一社となり目立たないと、次々に慌てて粉飾を発表したということではないのでしょうか。

想定以上に企業の業績は苦しいようです。